こんにちは、設計の玉中です。
昨年度から実施されています国交省・環境省・経産省の三省合同補助金【住宅省エネキャンペーン】
例年は11月の1週目に翌年度の概要が発表されていたのですが、11月29日(金)にようやく2025年度用の概要が公開されました。
今回は速報として、概要資料の中身を簡単にまとめてみます。
1. 事業の背景と目的
まずは本事業の目的から見ていきます。
と言っても昨年・今年とそれほど変わりはなく、『エネルギー価格や物価の高騰の影響を特に受けやすい子育て世帯などに対して省エネ住宅の導入を促し、既存住宅についても省エネ改修等への支援を行い、質の高いストック住宅を増やす』ことを目的としています。いずれも住宅が対象となっていて、店舗や倉庫などは申請出来ません。
新築住宅は今度の4月から断熱性能の担保が義務化され、その先も2030年に現在のZEH水準の省エネルギー性能の確保が義務化される予定です。この目的は2050年を区切りとする脱CO2の国際的な取り決めへの対応策の1つですね。
それに向けて補助金の対象に求める性能が段階的に引き上げられていて、後述しますが新築住宅向けの枠組みにさらに上位のランクが設定され、逆に今年度と同じ性能だと貰える補助額が抑えられています。
リフォームについても補助金の上限金額こそ変わっていませんが、対象必須工事3種類の内の「どれか1つは必須」だったのが「2つ以上必須」に変わっています。
本制度の要件には入っていませんが、他の補助金だと耐震性の確保が必須要件だったりするものは多いです。
それを思えばまだ利用しやすいのですが、やはり徐々に厳しくなっていっていると感じます。
なお、国会で補正予算が成立することが前提であり、正式にはまだ確定していないという扱いになっています。
しかし、ここ数年は成立しなかったことはありませんし、野党も省エネ施策の必要性は感じていると思われるので、今年も大丈夫と考えて良いと思います。
2. 申請の期間
それでは三省合同補助金の事業全体に関わる概要として、申請期間を確認します。
申請の条件や対象工事はそれぞれの事業で異なるので、後日個別記事にして解説したいと思います。
閣議決定された『2024年11月22日以降に対象工事に着手したもの』が対象となります。
対象工事とは新築であれば「基礎工事より後の工程の工事」で、具体的には土台敷きや棟上げなどが当てはまります。
リフォームの場合は「リフォーム工事に着手」となるので、解体作業を始めたりするのが11月22日以降ということになります。
そして申請期限は今年と同じく年末までということで2025年12月31日までになります。
実際に申請出来るのは例年通りなら3月下旬か4月の頭になると思いますが、それまでに着手・完成した工事であっても、上記の条件に当てはまっていれば申請対象になるということですね。
契約時期は不問という点も今年度と同じです。
3. 子育てグリーン住宅支援事業【新築】
それでは個別事業の概要について見ていきます。
まずは新築の場合です。
すべての世帯が申請できる『GX志向型住宅』という上位ランクが追加となり、
18歳未満の子を有する「子育て世帯」又は夫婦のいずれかが39歳以下の「若者夫婦世帯」に限って申請が出来る『長期優良住宅』と『ZEH水準住宅』は据え置きとなりました。
しかし、昨年度はZEH住宅で80万円が基本だったのに対して最大60万円/戸となっています。
その一方で『DRに対応したリソース導入拡大支援』という新たな枠組みが増えています。
DR(ディマンド・リスポンス)とは電力需要を制御することで電力需給バランスを調整する仕組みで、機能が組み込まれた蓄電システムに対して支援があるようです。
これは三省合同補助金としては完全に新しく増えたものです。
しかし、国交省ではなく経産省と環境省が主導で行っているZEH補助事業と同じく「SII(環境創生イニシアチブ)」の管理する補助金に近しいDR蓄電システム支援があるので、それが参考になるかもしれません。
『GX志向型住宅』は断熱と省エネの上位ランクまで到達させる住宅に対する補助です。
GXはグリーントランスフォーメーションの略で、化石燃料を出来るだけ使わず、クリーンエネルギーの活用に向けた変革や活動のことです。
「ZEH水準」を超える「ZEH+水準」というものは以前から基準の1つとして知られていましたが、それをさらに上回る基準を作って、そこまで到達して欲しいという意図で設けられたものですね。
『ZEH水準』は
断熱等性能等級5以上 かつ 一次エネルギー消費量の削減率20%以上削減 という基準ですが、
今回の『GX志向型』の基準は
断熱等性能等級6以上 かつ 一次エネルギー消費量の削減率35%以上削減 という、今までよりもかなり高い水準となっています。
加えて太陽光発電等の再生可能エネルギーによる一次エネルギー消費量の削減も必須で、
削減率100%、つまりZEHの達成が要件となっています。
また、『長期優良住宅』と『ZEH水準』という昨年度から引き続きの2つについても条件によって補助金額が変わるようになりました。
今年度は『長期優良住宅』の申請は一律100万円だったのですが、
「建替え前住宅等の除却を行う場合」に限って100万円の補助額で、
建替えに当たらない場合は80万円の補助額に減っています。
『ZEH水準』も同様に、今年度は一律80万円の定額でしたが、
「建替え前住宅等の除却を行う場合」に限って60万円の補助額で、
建替えに当たらない場合は40万円の補助額となっており、今年度に比べると半額になりました。
「建物の除却がいつ行われたのか」という期間も要件に入って来るかもしれませんので、追加情報が出たらよく確認しましょう。
4. 子育てグリーン住宅支援事業【リフォーム】
続いてリフォーム工事の場合についてです。
まずは国交省の補助事業から見ていきます。
三省合同で行われる補助事業の中でも躯体の断熱・省エネ住宅設備機器・子育て対応改修・バリアフリー改修などが含まれています。
また、高性能な窓やドアは基本的に後述する『先進的窓リノベ事業』の対象に、高効率給湯器は『給湯省エネ事業』の対象にするのですが、窓リノベや給湯省エネの対象にはならない少し低いグレードのものもコチラには申請出来る場合があります。
前述したとおり、今年度は必須工事3種のうち1種を実施していれば申請できたのですが、2025年度では2種以上が補助要件となっています。
また、3種全て実施すると補助額の上限を増やせるという位置づけです。
なお、必須工事は「開口部の断熱改修」「躯体の断熱改修」「エコ住宅設備の設置」の3種で、
ワンストップで『窓リノベ』に申請を出している場合は「開口部の断熱改修」を、
『給湯省エネ』に申請を出している場合は「エコ住宅設備の設置」を行っているものと見做してくれます。
1つ1つの対象工事や補助金額は明らかになっていないので現時点では上限しか分からないのですが、大項目は「リフォーム瑕疵保険の加入」が無くなっているくらいなので、工事対象は殆ど変わらないと予想されます。(最後に「等」と入っているので削除になったとは限らないです)
ただ、ここ数年の傾向としては申請出来る条件が厳しくなる代わりに工事1つ1つの補助金額は若干上がっていることが多いです。
現時点で分かっている範囲で気になるのは、開口部の断熱改修と躯体の断熱改修について「ZEH水準に相当する省エネ性能以上の改修工事に限る」と脚注に小さく書かれていることです。
今年度はこれらの改修工事の基準が「省エネ基準」と「ZEH基準」の2種類あり、補助金額で差を付けられていました。
もしかすると「省エネ基準」は廃止されて「ZEH基準」となる工事だけが対象となるのかもしれません。
一方で補助単価が上がることで、申請出来る下限に達することが容易になり、高額な全面リフォームではなく部分リフォームでも使える可能性は高くなっているかもしれません。
もしこの通りだとすると、パッと見ただけだと一長一短に見えますが、昨年度・今年度の実績から言えば省エネ基準での断熱の補助額を貰えなくなるマイナス面の方がかなり大きいです。
詳細が発表された際には特に注意すべきポイントとなりそうです。
4. 先進的窓リノベ2025事業
昨年度・今年度と好評だった『先進的窓リノベ事業』が来年度も継続されます。
上限は200万円と過去2年と同じまま。三省合同補助金の中で最大の補助額となっています。
初年である昨年度は内窓設置の需要が一気に高まってYKKAPや三協アルミなどのサッシメーカーさんがパンクしてしまったのですが、今年度は割と落ち着いたままでしたね。
こちらは補助金額の単価も発表されているので、確認してみましょう。
サッシやガラスの性能をグレードで分け、さらにサイズで大・中・小に分けるという内容です。これはスタートした昨年度から変わっていません。
性能がSSとSになる基準がまだ出ていませんが、グレードAがUw=1.9以下となっていて据え置きなので、おそらくSSとSも変わっていないと思います。
今年度と比べるとガラス交換と外窓交換は工法に関わらず単価は今年度と変わっていませんが、内窓設置の補助額が今年度よりも少し下がりました。
内窓設置は外窓交換に比べると室内側の工事だけで済むため取り組みやすい代わりに、断熱や気密などの性能向上が限定的なので、なるべく外窓交換をさせたいという意図が見えますね。
5. 給湯省エネ2025事業
こちらも窓リノベと同じく昨年度から始まった、高性能な給湯設備に対する補助です。
昨年度は補助額が低く使い勝手が悪くて予算がかなり余っていましたが、今年度は補助単価が上がって利用するメリットが増えた結果、12月5日時点で91%に達していて期限よりも早く予算消化が終わってしまいそうになっています。
こちらも補助単価が発表されているので見てみましょう。
こちらも窓リノベと同じく昨年度から始まった、高性能な給湯設備に対する補助です。
昨年度は補助額が低く使い勝手が悪くて予算がかなり余っていましたが、今年度は補助単価が上がって利用するメリットが増えた結果、12月5日時点で91%に達していて期限よりも早く予算消化が終わってしまいそうになっています。
こちらも補助単価が発表されているので見てみましょう。
まずは基本となる高効率給湯器の補助額です。
対象製品は
①ヒートポンプ給湯器(エコキュート)
②ガス・ヒートポンプのハイブリッド給湯器
③家庭用燃料電池(エネファーム)
の3種類です。
それぞれに『基本額』という設定があり、それに加えて高機能な機種であれば加算を受けることができます。
A要件とは「昼間の余剰再エネ電気を活用でき、インターネットに接続可能な機種」と規定されています。
インターネットから天気予報などの情報を仕入れて、電力消費のピークをずらして湧き上げ時間を調整したり出来る機種が対象となります。
B要件は「補助要件下限の機種と比べて、5%以上CO2排出量が少ない機種、または、お日さまエコキュート」が該当しています。
純粋に省エネ性能が高い機種か、お日さまエコキュートか、ということですね。
C要件はエネファームのみに適応されるものとなっており、内容は「ネットワークに接続可能で、停電が予想される場合に、稼働を停止しない機能を有する機種」となっています。
自然災害などで停電してしまうような事態に陥っても、停止せずに動き続けて非常用電源として使える機種には加算されると考えれば良さそうです。
それぞれの補助額ですが、3種類全てで基本額が今年度よりも下がっていますが、加算条件を満たす高性能な機種については加算された合計金額が今年度と同じになるという設定です。
とりあえず対象になる、という性能の機種だと今年度に比べてメリットが小さくなりますが、何かしらの加算要件を満たす機種であれば今年度と同じ補助額を受けられます。
これに加えて『撤去加算』という制度があります。
『給湯省エネ事業』の対象となる高効率給湯設備の導入と一緒に行う「一定の機器の撤去」に対して補助が出るという内容で、今年度から引き続きとなります。
その加算額がコチラです。
今年度の撤去加算は蓄熱暖房機が10万円/台、電気温水器は5万円/台だったので、コチラも少し下がっていますね。
古い電気製品は燃費が悪くてかなりエネルギーを食うので、なるべく使わないで欲しいというのが政府の意図です。今年度はこの撤去加算が別枠として予算が組まれていたのですが、11月18日に予算が終了となっており、好評だったことが伺えます。
もし現在のお住まいで電気温水器をご利用の方はエコキュート等に買い替えるチャンスかもしれません!
6. 終わりに
ようやく発表された2025年度用の三省合同補助金。
特にリフォーム・リノベーションを考えている方には大変お得な制度です。
新築を考えておられる方にとっては、来年度は今までのままの建物性能だと補助金額が下がってしまうケースが多くありそうです。
本制度は申請期間に余裕があるのが大きなメリットではあるのですが、補助金額で言えば環境省の委託を受けた『SII(環境創生イニシアチブ)』の管理する『ZEH支援事業』の方が多く貰える場合もあったりすると思いますので、営業担当者に早めに相談しておきましょう!
例年通りなら詳細な情報が1月中旬くらいに出てくるのではないかと思います。
また解説を記事にしていきたいと思いますので、ぜひチェックしてください。
新築事業部 管理設計 玉中健太
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