ジョブズが言ったそうですが、『意中の女性にライバルが十本のバラを贈ったと聞いて、あなたは十五本のバラを贈りますか?』
つまり、性能や機能など、数値に置き換えることのできるモノで競争しても、相手の心を動かすことができないということを言っているのだと思います。自分の商品で、顧客に提供したい価値はなんなのか?と言うことこそが大切で、それをストレートにプレゼンしないと選ばれはしないとの教えですね。
2000年代初頭に大ヒットした商品で、MP3プレイヤーというのがありました。5GBもの容量があり、プレイヤー自体も小さくて持ち運びができる。デジタルデータなので、旧来のウォークマンのようにカセットテープやCDなどの出し入れがなくて便利。
だったのですが、これは1年ほどであっという間に次に出てきたある商品に取って代わられました。その商品はiPodでしたね。
このiPod、5GBのMP3プレイヤーと性能や操作性などはほぼ変わりませんでした。が、これが出てきてからあっという間に抜き去っていきます。何が違ったのか?それは『1000曲をポケットに』というキャッチコピーでした。確かに5GBがどうとか、操作性がどうとかいう前に、“ええ?このポケットに軽々としまえる小さな箱に1000曲もの収納ができるの?”という驚きと、それによってもたらされる通勤途中や自室での時間の過ごし方に具体のイメージが想像できました。それによって、“ちょっとええかも”と心動かされた人が多かったのではないでしょうか?
90年代、まだまだ日本の家電メーカーが勢いのあった頃のことです。各メーカーが家庭用のビデオカメラを発表していました。録画容量や画素数の多さなど、競争が激化していきましたが、そんな中で、パナソニックが一種独特の訴求をしたのです。それは『40倍のズームレンズ』を打ち出したモノでした。なぜ家庭用のビデオカメラが必要だったのか?それは、子供の活躍する姿。運動会で一生懸命に走ったり、学芸会で演技したり、その額に浮かぶ汗。我が子の懸命の頑張りを記録したい。でも、良い席が取れるとも限らない。だからこその40倍ズームレンズをお勧めしたようです。これも大ヒットでした。
他にもありますね。例えば、オイシックスのミールキット。共働きの奥様。家に帰って0から作る手料理を家族に作りたいのは山々だけど、仕事との両立で、そこまで時間をかけることができない。でも、手抜きとは思われたくない。そんな方に向けた商品。
毎週送られてくる段ボール箱の中には、栄養学に基づいた、料理のレシピと安全な食材。もちろん下処理や、出汁取りも自分でしないといけませんが、だからこそ手抜き感がない、一手間かけた満足感。しかも、メニューを考える時間や食材調達の時間が省けます。仕事と家事を両立させたい働く女性に向けた『頑張る女性の一手間料理へのお助けミールキット』が提供している価値なのだとか。
こう考えた時、私たちの木の家、ヤマヒロで言えば、しそう杉の家ですが、これはお客様にどんな価値を提供しているのか?これは山ほどあるんです。例えば・・・、
・地元材を使うことによる地元への経済循環性
・自然素材による健康への配慮
・断熱と遮熱、24時間熱交換かんき(OM)による快適性
・耐震計算と制振金物と直下率の高さによる地震への強さ
・しそう杉のどこが耐震性能的に有利か
・デザインルールによる外観の美しさ
・ディテールのルールによる内装の良さ
・窓の配置計画(風通し、目線、光の調節)による空間のゆとり
・収納計画(8つの収納ルール)による時間のゆとり
・家具計画による人間の距離感のゆとり
などなど
これらは言葉だけでは分かりにくく、図面や現物を見ながらでないと伝えにくい。注文住宅だから家によって図面が千差万別なのでなおさらです。
忙しい現代人のお客様たちに、自分らしい時間を持てる、そんな家を提供したいというのが素直な気持ちなんですが、どう表現したら良いのやら。
三渡眞介52歳、まだまだ研鑽が必要なようです。