こんにちは、設計の玉中です。
絶賛申請受付中の補助金『こどもみらい住宅支援事業』と並列で
新しい国交省の補助金が始まっています。
制度の名前は『住宅エコリフォーム推進事業』です。
例によって長くなりますので、何度かに分けて記事にしていきます。
今日は①概要編として、補助金の目的や対象・期間などを取り上げます。
今回の制度の目的は名前の通り、住宅の省エネ化リフォームを支援するものとなっています。
老朽化の進んだ耐震性の低い建物の改修・建替えをすることや
断熱性能の高い建物へとリフォームすることで、
良質な住宅ストックを増やすことを目指すのが政府の方針です。
近年は中古物件の再販リノベーションも増えつつありますので、
その後押しもしようということですね。
本制度では規模によって
①全体改修・建替え
②部分改修
に分かれています。
具体的な要件が異なるので、どちらに該当するのかチェックが必要です。
また、住宅ストックを増やすという目的なので、耐震性があることも要件となっています。
なお、建替えはOKなのですが、それ以外の新築は対象外ということにも注意です!
それでは補助対象となる内容を見ていきましょう。
補助の内容は大きく3つ、
1⃣省エネ診断
2⃣省エネ設計
3⃣省エネ改修(建替えを含む)
となっています。
1⃣省エネ診断
は既存建物の性能を調査し、証明書を取得する費用などを指します。
第三者機関によって断熱・省エネ性能を評価するもので、
『BELS』や『住宅性能表示制度』などがありますね。
昨今では既存住宅の売買に当たって性能表示制度を実施し、
温熱環境や耐震性・劣化具合などを調査するために利用することもありますね。
まずは現在の状況を知り、改修の指針とすることが目的です。
2⃣省エネ設計
は省エネ改修を行うために必要な調査・設計・計画等の費用を指します。
「調査」と書くと1⃣と被っているように見えますが、
1⃣は第三者機関による調査なのに対して、
2⃣は設計事務所や工務店が自社で行う現場調査、と考えれば良いと思います。
また、1⃣の評価を受けるための資料作成にかかる費用もここに含まれます。
山弘のリノベーションでは全物件で原則「インスペクション」をさせて頂いています。
この時に既存の窓や断熱材の仕様・設備の品番等を確認したり、
建築当時の図面をコピーさせて頂いたりします。
リフォームでもまず現調として現地へ伺い、現状を色々と確認しますが、
耐震性を確認出来る資料などは出来る限りご用意頂いてチェックすることになります。
3⃣省エネ改修
は実際に行う工事のことを指します。
対象となる工事は「開口部改修」と「躯体断熱」と「エコ住宅設備」の3種類となります。
ただし、部分改修では「開口部改修」を複数個所行うことが本制度の必須条件であり、
「躯体断熱」と「エコ住宅設備」だけでは申請出来ないことに注意です。
「開口部改修」は新しい窓に取り替える工事や既存窓を利用してガラスだけ交換する工事などです。
しかし、何でも良い訳ではなく、
①データベースに事前に登録されたZEH仕様基準レベルの商品を
②複数の開口部について実施
することが本制度の必須条件となっています。
このZEH仕様基準レベルですが、兵庫県の大半の地域では
「アルミ樹脂複合サッシ+LowE複層ガラス」の組合せなどが該当します。
これは各メーカーさんの試験値を元にしていますが、
しっかりとデータベースで確認してから決めることが大切です。
「躯体断熱」は床・外壁・天井に断熱材を施工することです。
こちらも開口部と同じくZEH仕様基準を満たす必要があるので、
データベースに登録された断熱材を充分な厚み分施工する場合のみ補助対象となります。
「エコ住宅設備」は種類が多いので箇条書きにしますが、
太陽熱利用システム
ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯器(ハイブリッド)
電気ヒートポンプ給湯器(エコキュート)※1
潜熱回収型石油給湯器(エネファーム)※1
線熱回収型ガス給湯器(エコジョーズ)※1
高断熱浴槽※2
浴室シャワーの節湯水栓※2
蓄電池
燃料電池システム(エネファーム)
ガスエンジン・コージェネレーション
LED照明
が対象となります。
やはり事前登録されている商品を選ぶことが前提となるものが多い他、
※マークの設備については追加条件があり、
※1については※2の2項目を満たしている時だけ補助対象に出来ます。
逆に※2の2項目を新しくしても、給湯器が性能の悪いままだとNGとなります。
浴室改装工事と給湯器取替え工事を一緒にするなら良いのですが、
どれかを新しくしただけでは対象外になる可能性が高いということですね。
皆さんが一番気になるであろう補助金額については
計算方法がかなりややこしいため次回にします。
なお、戸建て住宅の場合の上限は512,700円となっています。
何とも中途半端な数字です...
これは①全体改修・建替えでも②部分改修でも共通です。
こどもみらい住宅支援事業の補助金額はリフォームの場合は上限で30万円、
子育て・若者夫婦世帯の場合で上限が45万円だったので、上限は増えていますね。
しかし、ここが本制度の一番恐ろしいところ、
申請スケジュールについてです。
まず補助対象となる期間面の条件を確認していきます。
①令和4年9月1日以降の工事請負契約であること
②事業者登録以降に着工すること
③期限までに交付申請を提出すること
④期限までに完了実績報告を提出すること
の4つが要件です。
①については国交省から制度の発表があったのが8/31なので、
その翌日の契約分からというのは納得です。
②については過去の制度でも同じように事業者登録してから着工の条件でした。
本制度についても山弘は既に事業者登録が済んでいますので、問題ありません。
ちなみに事務局のHPで登録されている業者を検索することも出来ます。
注意すべきが残りの③交付申請と④完了実績報告です。
国交省から発表された本制度のスケジュールが次の図になります。
③交付申請で提出するものとしては
契約書、見積書、共同事業実施規約への署名押印、工事の図面
などが共通で必要な書類です。
加えて
当該建物の不動産登記における登記事項証明書(建替え以外の場合)
従前建物の不動産登記における登記事項証明書(建替えの場合)
建築確認済証(建替えの場合)
建物の性能を証明する証明書:BELS認定書など(全体改修・建替えの場合)
などが求められます。
建替えや全体改修の場合、山弘の標準的なスケジュールでは
御契約頂いた後の詳細図面の作成と打合せ、申請等に概ね2ヶ月かかります。
仮に今日(10/27)に御契約となった場合で順調にいったとして
年明けに本制度の交付申請が出来るわけなので、1/13にはギリギリです。
今から全体改修(リノベーション)か建替えの御契約を頂くという方については
既に期間的には難しいと言わざるを得ないわけですね。
部分改修のリフォームは内容によって様々なのですが、
御契約から着工までは2~3週間ということも多く、可能性はありますね。
④完了実績報告で提出するものは
工事費用の領収書、工事各部の写真、変更があった場合は図面と見積明細書
が共通となります。
その他に
従前建物の滅失の登記完了証(建替えの場合)
検査済証(建替えの場合)
出荷証明書や納品証明書(部分改修の場合)
などを追加で提出します。
こちらの期限については2/28となっています。
「工事各部の写真」と支払いを済ませた「領収書」の提出が必須なので、
2/28までに工事を完成させているということになります。
規模にも依りますので一概には言えませんが、
全体改修や建替えをするとなると2ヶ月では工事が終わりません。
何とか③を間に合わせて年明けに着工したとしても、
解体して、内部造作をして、内装工事をして、設備を据えて、完工まで3~4ヶ月かかります。
期限までに書類や写真を揃えるのはほぼ不可能です。
やはり部分改修リフォームでないと厳しいですね。
ちなみに先立って実施されている『こどもみらい住宅支援事業』は
写真や書類を揃えて提出する期限が3/31までになっています。
「完工期限、こどもみらいよりも早いんかい!」と思わずツッコミました。
一応期限については(予定)となっています。
本来は予算枠が無くなったら期限前に打ち切ることへの意識だと思いますが、
今後延長されることに期待、でしょうか。
というわけで、
新しく始まっています補助金『住宅エコリフォーム推進事業』の紹介記事
①概要編をお届けして来ました。
正直な感想としては
『こどもみらい住宅支援事業』に比べて貰える最大補助額は大きいものの、
対象となる条件が厳しい。申請期間がかなり短い。
という2点のデメリットの比率が大きく「使いにくい」印象を持ちました。
しかし「浴室改装+脱衣室のリフォーム」など、
部分改修なら申請出来るケースもありそうです。
制度に関心を持って頂いた方は
続きの紹介記事②『補助金額計算編』もぜひご覧ください。
実施積算課 玉中健太