設計の築山です。
家を建てられるお客様から、時々質問が出るのが、「なるべくメンテナンスがかからない家にするにはどうすればいいのか?」というものです。家づくりを担う身としては、このような質問に対しての答えを考えることはとても重要で、これからのベーシックハウスの本質を捉えてゆくことにつながると思います。
堀部安嗣氏の著書、住まいの基本を考えるの中に住宅の寿命について書かれたコラムがありましたのでそちらをご紹介します。
六つのS層
六つのS層とは、アメリカの作家スチュアート・ブランドが著書How Buildings Learn(建築はいかにして学ぶか)の中で、建築は六つのSの層で出来ていると言っています。それをわかりやすく表した図が上にあげたものになります。
図で示された線に太さの違いが見て取れると思いますが、これは更新の速度すなわち、寿命を表しています。太いものから順に
SITE(敷地)
STRUCTURE(構造)
SKIN(外装)
SERVICES(設備)
SPACE PLAN(空間設計)
STUFF(家具調度)
つまり、住宅は層によって寿命や更新速度が違うので、その寿命を一概に言うことはできないのです。けれどもその層と役割と速度の違いを認識することは住宅の成り立ちや寿命を考えることにつながると思います。現代の日本の住宅事情と照らし合わせて、順番に六つのSについて説明していきます。
STRUCTURE(構造)
次に寿命が長く、そう簡単に変えられない層が構造です。ほぼ、一生ものと捉えていいでしょう。それが敷地と密接につながっているいることは敷地のところで説明した通りですが「敷地あっての構造」ということをしっかり認識すべきでしょう。木造は移築できることに加えて、増改築や減築が容易なところも優れていますし、日本の生活にも適していると言えます。
戦後、人口が急激に増加し、資材不足の中で大量に供給された在来工法の木造住宅は、ずっと未完成なままでした。いわば質より量が求められた時代でした。しかし現在、木造の構造上の弱点大きく改良されました。その背景には、大きな地震や自然災害での教訓があります。また、断熱気密に有利な工法と、昨今の面で構造耐力を取ってゆく工法とがうまく融合して、ようやくここにきてベーシックな在来木造工法が確立されて1つの完成形に到達したと考えていいように思います。
ただ、住宅における「量から質」の時代の到来はまだまだ先なのです。なぜなら、性能と同程度に住宅に大切な「情感」が欠けているからです。その情感のために大役を担うのが次項の外装になります。
住宅事業部 営業設計1課 築山