ある不動産情報サービス事業の大手企業さんのお話を聞く機会がありました。
現在の日本の家作りを考えるのにあたって、デンマークと日本の両国の家づくりを見比べたアンケートの報告でした。
この調査は、両国の住宅オーナー1000人ずつにアンケートをとったもの。アンケートの中身は、『家をどうとらえているか?』『住宅地で重要視しているものは?』『住宅内での生活の違いは?』といった観点での様々な内容。細々したことはさておき、調査結果から考察された結論のみをご紹介いたします。
『あなたにとって家とは?』
・家はプライベートな休息場所と考える日本人
・家はアイデンティティーと言うデンマーク人
※最大の違いは、人を招いて交流し、本来の自分を回復する場所としての家
『住んでいる街で気に入っている点は?』
・通勤、通学、交通機関、静かな環境、治安の良さが重要な日本人
・自然、商業施設、景観、自分らしさ、チャンスを重要視するデンマーク人
※安全性・快適性に留まる日本人、所属・承認・自己実現などの欲求を求めるデンマーク人
『家で気に入っている点は?』
・日当たり、風通し、持ち家、新築、ブランドなどと答える日本人
・友人との交流、創造性、自分らしさを強調するデンマーク人
※デンマーク人の良い家とは、快適さを備え、所属や自己実現など高い次元の欲求を満たす家
前にも書きましたが、私が子供の頃は、夕飯時にちょくちょく父の友人や親戚、また近所の人たちがやってきました。“ちょっと寄ったよ”程度のものですが、私には賑やかで楽しい思い出。そんな家の中での気兼ねない交流の場が少なくなってますよね。今回のコロナ禍で思い出しました。日本の家もかつては交流や創造性、自分らしさの表現の場だったってことを。
デンマーク人って、週に1回はホームパーティーを開いたり、参加したりするそうです。だから、家の中の調度品は自分の好きなものを揃えて、自分らしさを表現するそうです。彼らにとって、家は自己表現の場であり、社交場であり、家族の親密性を高める場でもある。
それに対して、今の日本の家は、プライバシー、快適性、安全性を重視し、大手のブランド頼りになりがち。
コロナは、人的にも経済的にも大きな被害を出しましたが、反面、家の中の大切さを思い出させました。家はただ単に雨風を避けて寝起きをするだけの場所ではなく、家人のアイデンティティであり、子供が大人になっていくための教室だったのです。