建築業界を震撼させるウッドショックがまだまだ続いておりますが、そもそも米松(アメリカやカナダの松)や欧州カラマツなどが、コロナの影響で手に入らなくなったのがウッドショック。国産材は、別に山や市場から消えているわけではなく、今まで通りにあるのですが、価格だけが不自然に上がっている。それも、何割か値上げとかのような可愛いものではなく、ものによっては数倍になっております。まさに、なんでやねん?と、怒鳴りたくなるような不自然さ。
確かに、ここ数十年の日本の木材は安く値つけをされていました。本来の値段に比べて6〜7割程度の値段でしか買っていただけない。これでは、林業に携わる人たちがやっていけない。そんな値段です。特に山主さんは、60年もかけて木を育てた挙句、お金になるどころか出荷すればするほど赤字が出てしまう。
その理由は、植林をせずとも人の手をかけずに自然に育った米松を中心とした外国産材の影響です。国産材は、高度経済成長期までは関税によって守られてましたが、機械工業の輸出に対する外国勢の反発圧力に屈し、80年代に木材の輸入関税が撤廃。日本国内に出回る外国産材の値段が異様に安くなり、それに合わせて国産材も、本来の6〜7割でしか取引してもらえなくなり、日本の林業は衰退していきました。
なので、今回のウッドショックは良いきっかけ!国産材の値段が上がって、林業復活!そんな声もあります。が、しかし、私は逆だと思いますね。だって、どう考えても山主さんには、まったく値上がりの恩恵が返ってきていないのですから。
商売において値つけほど重要なことはないと思っております。世の中にある商品は全て、多くの人や会社が携わって作られ、市場に出回ります。加工や流通それぞれにお金がかかっている。それぞれの会社や働く人がその仕事で食べています。だから、値段には正当な理由があるのです。値つけは、高すぎるのもダメ、安すぎるのもダメです。高すぎると売れない。安すぎたら作れない。適正価格を付け、適正価格で売買することが重要です。
今回のウッドショックで値上がりしている国産材。そこには正当な理由がない。アメリカでの住宅需要のため、米松が日本に入って来なくなったので、米松の相場が上がるのはわかります。しかし、それに合わせて国産材も上がった。つまり、国産材の値段が上がった理由が、木材流通の川上から川下までの流通業者の中で正当に積み上げられたものではなく、米松の値段が上がったから国産材を上げても売れるのではないか?ただそれだけなのです。つまり、流通の中の誰かがやっている便乗値上げですね。これだとその誰かが得をするかもしれませんが、その代わりに、別の誰かが泣きを見る。そんな浅ましいことになってるんです。
インフレの時は、物価も上がりますが所得も上がる。しかし、今回は決して所得が上がっているとは言えません。つまりインフレではない。にもかかわらず、ここ半年ほどで木材の値段が数倍になっている。これは異常ですよね。こんな値段の付け方をしてしまうと、今後、国産材の信用がなくなってしまうのではないか?阪神淡路や東日本や熊本の震災の時、さまざまな建築資材の値段が跳ね上がりました。ブルーシートなどは何十倍の値段に・・・。情けない、浅ましい、そんな思いで、自分達の業界の流通を見ておりましたが、今回のウッドショックも同じ気分です。理由のない値上げ、適正でない値つけは、国産の林業をさらに衰退させてしまいかねません。
ヤマヒロはまだ今のところ木材の値上げせずにすんでおります。それは普段から仕入れを他社に任せず自社でやっているので、木材仕入れに関する知識と経験の蓄積があります。だから材料1本1本に適正価格の交渉をしているからです。ですが、これもいつまで持つことやら。米松の作り出す相場という怪物が理不尽に暴れまわっていますので、いつかは影響を受けるようになってしまうかも。とりあえず、あと10〜15棟分(ざっくり半年分くらい)はいつもの価格で耐えてみせます。そしてその後の分に関してですが、新しい機械への投資を決定しました。それと仕入れの更なる工夫で、なんとか値段キープができないかと試行錯誤中です。
ヤマヒロは工務店ですので、これからも木材に関しては仕入れを絶対に人任せにせず、その時代に合わせた適正価格(山主も流通も工務店も顧客も納得の値つけ)を追求したいと思っております。