今、建築業界ではウッドショック(2021年の初め頃から、世界的に木材の価格が急騰している現象)が騒がれています。
アメリカやカナダの米松の供給量が減っていたところに、コロナで需要減と踏んでさらに減産。ところがリモートワークで自宅ごもりを余儀なくされたアメリカの消費者が、郊外に一戸建てをとのことで、まさかの需要増。そのため一気に価格高騰。中国でも同じ現象が起き、世界中で木材を高値で買い付け。さらにコロナの影響による世界的な海運業界のタイトな物流事情が加わり、世界的に木材の奪い合いが始まっている。
以上が、今回のウッドショックという現象ですが、長くデフレの続いた日本はその奪い合いで負け続き。日本で使われている木材の6〜7割が欧米に頼っている現状で、米松などの高騰は国産材の調達にも色濃く影響を与えているようです。それは価格だけでなく工期においても。
製材部門を自社で持ち、地元材で家を建てているヤマヒロにはあまり関係ない話なのですが、いずれにしても建築業界では大変な状況のようです。このウッドショックに対して、5月のはじめのYAHOOニュースでは、日本の林業業界に対して、以下のように酷評をしています。
価格が上がっても増産しない不思議
まず誰でも思うのは、材価が急騰しているのなら、国産材をどんどん増産すればいいのに、ということだ。長年、価格低迷に苦しんできたのだから、今こそ増産すれば儲けるチャンスではないか。 ところが日本の林業界の動きは鈍い。 なぜか。まず業者は「いつまで高値が続くのかわからない」という不安にさいなまれている。 伐採業者は、現在伐っている山を山主と従来の価格で契約した。そこで木材価格が急騰したのだから大儲けだ。ただ山主に還元することはない。 しかし次に伐採を急いで山主と契約しようとしたら、高値になる。木材を山から出すには、行政手続きの変更、機材や人員の手当てなどで急いでも3カ月程度はかかるが、その頃にバブルが弾けて元の価格にもどっていたらどうしよう……と戦々恐々なのだ。常に悲観的なのも林業界の特徴だろうか。
補助金がなければ動かない業界
それに林業界は伐採や搬出のほか、作業道を入れるのも補助金頼りが恒常化している。しかし補助金の支出は年間で決まっているから、急に増額はされない。自腹を切って道を入れる気もないから補助金待ちだ。 林業は市場原理ではなく、補助金の額で動いているのである。 ほかにも裏事情はいろいろある。山主、伐採業者、製材業者、合板業者などの連携ができていないこともその一つ。誰が儲けるのか、誰がリスクを負うのかと疑心暗鬼にかられて、なかなか一致団結して増産に踏み切れない。 実は木材商社などは、昨年末から海外での価格急騰の動きをつかんでいた。だが、それを林業現場に伝えても、誰も本気にしなかったという。情報感度の低さがかいまみえる。 また住宅業界の建材ストックの脆弱さも見えてきた。製材業界などに、米中と張り合って高値をつける度胸も資金力もないことも露呈した。価格アップ分をエンドユーザーに転化したら、一気に売れなくなる恐れがあるからだ。日本人の懐事情そのものが貧しくなったのだろう。 しかし、木造住宅の木材の価格は建設費全体の1割程度。その分の1割か2割上がったところで、価格アップは数十万円にしかならないだろう。本当にその程度のコスト増を吸収できないのだろうか。
国産材を使って林業振興の嘘が露呈
それにしても、日本の林業界は危急の際に対応できないことを示したことにならないか。このままでは仮にウッドショックが終わってから「林業振興のために国産材をもっと使おう」と旗を振っても信用されないだろう。 逆に製材業界や住宅業界は、より安定的な外材依存を進めるかもしれない。 なんだかピンチをチャンスに、ではなく、チャンスをピンチに変えているような……。 コロナ禍であろうと、経済は動いている。ウッドショックは、日本の林業界のヤバい状況を白日の下にさらしただけかもしれない。
林業関係の身としては『やかましわっ!』と、言いたいところですが、痛いところをつかれています。
そもそも林業資源が世界有数に豊かな日本なのに、外材のシェア率が6割を超えるという状況。伐採時期を20年とっくに過ぎた森林たち。構造的な問題を多く抱える林業業界。
ヤマヒロがやっていることは、もはや珍しいらしく、業界ではそこそこ注目されています。近くの山の木で、地元の大工が建てる家づくりって、本当は当たり前だと思うのですが・・・。