設計の築山です。これからしばらく建築家吉村順三のことばを紹介したいとおもいます。今日はその5回目です。
吉村は少年の時から住宅に興味をいだき、日本の自然と風土に培われてきた独特の伝統建築に魅力を覚え、人の生活と幸せ、ヒューマンなものを建築に具体化することを一貫して実施してきた。地域に貢献する、品のある美しい建築を求めて作りつづけて20世紀を生きた建築家である。
吉村は、生前、これからの建築家のあり方を問われたとき、「簡素でありながら美しいもの、自分達の住んでいる日本の、長年にわたる風土と文化によって培われてきたさまざまな建築から学び、日本の気持ちから出たものをつくるべきでしょう」と語った。
そうした建築家吉村順三のことばを、存命中に活字となった新聞、雑誌、書籍等から選び、吉村が語った「建築は詩である」ということばを借りて、語録集『建築は詩』を刊行する(本文中「はじめに」より)
すまい 生活と人の感情
天井高
京都の町屋は小壁が小さく、天井もひくくて気持ちのよい立面をしている。私はもともと、内法5尺7寸という寸法が決定的ともいえるほど、いい高さの寸法であると思っていたし、そのうえ小壁がひくく、天井高の低いのが好きだったのだが、のちにアメリカにおいて、ボストン付近のコロニアル風の住宅をみたとき天井が意外に低く、そのうえ、たいへん気持ちのよい空間をしていたものだから、すっかり自信をえ、今では、できるだけ天井高を押えるよう意識している。(『新建築』1966年1月号より)
事実、低い天井高の空間は気持ちのよいものです。こればかりは頭の中で想像しても全然ダメですね。そこに身を置き、しばらくその場所で過ごすことで、すこしづつだけれどもわかってくるように思うのです。