“とほかみえみため”という言葉を聞いたことありますか?私は初めてだったんですが、これは神様を拝むときに用いられる唱え言葉=祝詞(のりと)なんだそうです。
漢字では、吐普加美依身外米と書くのですが、陰陽道などで用いられ、亀甲の上にト・ホ・カミ・エミ・タメの五部分の亀裂が入るよう祈って、占いにも使われました。
その意味ですが、前半の「とほかみ」は、遠津御祖神(とおつみおやのかみ)というそうです。つまり、遠くにいる神様、もしくは、ご先祖様のこと。後半の「えみため」は「微笑んでください」ということです。
つまり「とほかみえみため」とは、「神様・ご先祖様、どうか微笑んでください」という言葉です。
古代から日本では、祖霊が崇拝されました。ご先祖様から代々繋がれた命というものを感じ、先祖につながれば、神に繋がると考えられていたのです。
人間は例外なく両親から生まれます。そして、両親もそれぞれの両親から生まれますので、先祖を辿っていくと、1代遡れば両親2人、2代遡れば両親と祖父母をあわせた6人、3代遡ると14人、4代遡ると30人、そうして10代で2046人、30代でなんと10億人を超えます。この内、一人でも欠けると今の自分は存在しません。私たちの存在は、髪の毛の一本に至るまで、ご先祖さまや大自然の情報が詰まっているわけです。
つまり、『“私”はその先祖の集合体である』という意識を持つこと。先祖と繋がることで、これまで眠っていたDNAを目覚めさせる。そうすることで、先祖のパワーを自分に集めて、物事を成し遂げるための力を養う。そのための祝詞が、この“とほかみえみため”であったようです。
神道というのは、おそらく縄文から続く原始宗教。何千年も前から、こういう考えを持った日本人の倫理観。これは、漁労採集民族に共通する考え方。自然を従えるのではなく、自然の中で生かしてもらっているという考え方なのだそう。世界中の古代文明は、砂漠化で滅んだが、『縄文文明は自然との共生の中発展し、現在にも緑豊かな列島を残して続く文明である』という安田喜憲先生の説。
やっぱり、日本の住宅建築には、自然&祭祀&文化の要素が必要だと思うのです。