設計の築山です。
日本銀行は20日の金融政策決定会合で、長期金利を0%程度とする金利政策の変動幅を従来のプラスマイナス「0・25%」から「0・5%」に修正しました。大規模な金融緩和そのものは維持し、黒田 東彦総裁は記者会見で「利上げではない」と説明しましたが、金融市場では発表後、長期金利が急騰し、事実上の利上げとの受け止めが広がっています。
そこで、気になるのが住宅ローンの金利への影響ですね。住宅ローン比較サービス「モゲチェック」を運営するMFSの塩澤崇取締役は、「新規の住宅ローンの固定金利に影響がある」と指摘しています。調達金利が上がることで、金融機関は住宅ローンの固定金利を今後引き上げる可能性が高い。塩澤氏は「すでに固定金利でローンを組んでいる人にとって、今回の政策修正で金利が変わることはない。ただ、家計の固定費である住宅ローンを見直すきっかけになり、変動金利への借り換えが進むのではないか」と。「これからローンを組む人にとっては、変動金利の方が魅力的だろう」と指摘されています。(以下モゲチェックHPより転載)
1.政策変更の概要と背景
日銀は2016年より、「短期金利を -0.1%で固定し、長期金利を±0.25%の変動幅でコントロールする」という政策を取ってきました。
今回の政策決定で、この長期金利の変動幅を「±0.50%」へと拡大することとなりました。「±(プラスマイナス)」と上下に幅がとられていますが、現在は世界的な金利上昇局面であり、プラスの0.50%付近への急上昇が見込まれます。これは事実上の「利上げ」(金融環境の引き締め)となります。
背景にあるのはインフレ進行です。コロナ禍からの急速な経済正常化や原油などのエネルギー価格の上昇によって、2022年は世界的に急速なインフレに見舞われました。そしてインフレの沈静化に向け、欧米諸国の中央銀行は金融環境を引き締める「利上げ」を相次いで実施してきました。
日本の金利が一定の場合、海外金利が上昇すると円安が進行します。この円安が電力料金や生鮮食品・日用品など幅広い品目での値上げに拍車をかけています。
従来より日銀は、今回のような長期金利の許容幅の拡大は「事実上の利上げであり日本経済にとって好ましくない」と牽制してきましたが、足元のインフレ率は日銀が目標とする2%を上回る3%台にまで上昇しており、事実上の利上げに踏み切ることで物価上昇にブレーキをかける狙いがあるものとみられます。
2.住宅ローンへの影響は?
こうした政策変更を受けて、住宅ローンにはどのような影響があるのでしょうか?モゲチェックとしては、「変動金利は変わらず、固定金利は若干上がるが限定的」と予想します。
なぜなら、変動金利のベースとなる短期金利はマイナス金利が維持され、固定金利のベースとなる長期金利のみの変更だからです。
まず変動金利についてですが、基本的に変動金利は短期プライムレート(短プラ)と呼ばれる指標に連動しています。短プラは短期の金利指標ですので日銀のマイナス金利政策の影響を受けますが、こちらは今回変更されていません。もっと言うと、日銀がマイナス金利を始めた2016年のずっと前である2009年頃から一定となっています。言い換えると、「マイナス金利を始めても下げなかった短プラを引き上げる理由を、銀行は説明できない」のが現在の状況です。加えて、現在は変動金利が銀行間の住宅ローン顧客獲得競争の主戦場となっています。こうしたことから、現在の低金利が安定して続く可能性が高い、と考えます。
一方の固定金利はどうでしょうか。
固定金利は一般的に10〜19年程度の期間の金利を参照して、各銀行が決定しています。
(正確には固定金利はスワップレートと呼ばれる金利を参照しますが、わかりやすく国債利回りにしています)
政策変更がなされる前日(12/19)の日本国債利回りを金利年限(期間)を横軸にしてグラフ化したものが以下です。
長期金利(10年)自体は日銀の政策によって0.25%付近に留まっていますが、15年など超長期の金利は1%近い水準となっています。しかし7年金利と15年金利の間をとって線形補間すると、0.5%程度となります。これは、「長期金利は日銀が抑えていたため実際には上がっていなかったものの、実態としてはすでに0.5%付近の状態になっている」と読み解くことができます。
こうした状況を踏まえると、実は各銀行の固定金利は、すでに「長期金利が0.5%」になった状態を織り込んで決定されている可能性があります。
そのため、「固定金利は長期金利の誘導目標変更に沿って上昇するものの、上がり幅は限定的」と予想します。
※参照元
日本銀行:「2022年12月20日 当面の金融政策運営について」
3.今後の備えはどうするべきか?
モゲチェックでは「変動金利では安定した低金利が続き、固定金利については日銀の政策変更を受けて多少上昇するものの上がり幅は限定的」と予想しました。
しかし、もしも今後変動金利や固定金利が大幅に上昇することがあるとしたら、どのように今から備えておけばいいのでしょうか。
答えは
・住宅ローンを比較すること
・貯蓄&運用で資金を確保する
に尽きるでしょう。
住宅事業部営業設計1課 築山