設計の築山です。
家を建てられるお客様から、時々質問が出るのが、「なるべくメンテナンスがかからない家にするにはどうすればいいのか?」というものです。家づくりを担う身としては、このような質問に対しての答えを考えることはとても重要で、これからのベーシックハウスの本質を捉えてゆくことにつながると思います。
堀部安嗣氏の著書、「住まいの基本を考える」の中に住宅の寿命について書かれたコラムがありましたのでそちらをご紹介します。
六つのS層
六つのS層とは、アメリカの作家スチュアート・ブランドが著書How Buildings Learn(建築はいかにして学ぶか)の中で、建築は六つのSの層で出来ていると言っています。それをわかりやすく表した図が上にあげたものになります。
図で示された線に太さの違いが見て取れると思いますが、これは更新の速度すなわち、寿命を表しています。太いものから順に
SITE(敷地)
STRUCTURE(構造)
SKIN(外装)
SERVICES(設備)
SPACE PLAN(空間設計)
STUFF(家具調度)
つまり、住宅は層によって寿命や更新速度が違うので、その寿命を一概に言うことはできないのです。けれどもその層と役割と速度の違いを認識することは住宅の成り立ちや寿命を考えることにつながると思います。現代の日本の住宅事情と照らし合わせて、順番に六つのSについて説明していきます。
SKIN(外装)
外装の中で、日本の気候風土のおいて最も重要な役割を果たすのが屋根です。雨、風、雪、日差し、火災など、住宅の部位の中で最も過酷な環境にあり、酷使され傷みも早い層です。ゆえに一番お金をかけて堅牢につくられなければならないはずですが、近年はそのことが軽視されているように思います。
さて、屋根の軒庇をしっかり出せば、外壁は情感のある木の板や左官材で仕上げることが可能になります。軒の出寸法により、外壁のメンテナンスや更新の頻度は変わってきます。ところが、現代の住宅はあまり軒庇を出さないので、防汚性、耐水性において、ある意味優秀なサイディングと言われるセメント質のボードがよく使われます安価で施工が簡単というメリットもあるため、この数十年で瞬く間に普及しました。しかし風土や風景となんの脈絡もない色や、石調、レンガ調、といったフェイク模様が日本の風景を醜く変えてしまったと感じるのは私だけではないでしょう。自然素材による外壁が生花だとすると、自然につながらない色、模様のサイディングはまるで造花のようです。どんな小さな家でも大切な日本の風景、文化の一部であることを誰もが認識して、日本の住宅の質をもう一度取り戻してゆかなければならないと思います。
本当はこんなにも美意識に乏しい民族ではなかったはずですから。
住宅事業部 営業設計1課 築山