設計の築山です。これからしばらく建築家吉村順三のことばを紹介したいとおもいます。今日はその16回目
吉村は少年の時から住宅に興味をいだき、日本の自然と風土に培われてきた独特の伝統建築に魅力を覚え、人の生活と幸せ、ヒューマンなものを建築に具体化することを一貫して実施してきた。地域に貢献する、品のある美しい建築を求めて作りつづけて20世紀を生きた建築家である。
吉村は、生前、これからの建築家のあり方を問われたとき、「簡素でありながら美しいもの、自分達の住んでいる日本の、長年にわたる風土と文化によって培われてきたさまざまな建築から学び、日本の気持ちから出たものをつくるべきでしょう」と語った。
そうした建築家吉村順三のことばを、存命中に活字となった新聞、雑誌、書籍等から選び、吉村が語った「建築は詩である」ということばを借りて、語録集『建築は詩』を刊行する(本文中「はじめに」より)
昔の人の知恵
一夜にして誰もが一件の家を無から考えつく訳ではないのであって、やはり建築というのは、昔の人の知恵、それをいかにして新鮮にしてゆくかということが、デザインだと思います。手品のようにパッパッとデザインがでてくるものではなくて新しい組み合わせだと思います。ですから、その中には昔からの材料がいっぱいありますので、昔の人の知恵を尊重しなければいけないと思います。それが僕の信条なんです。(『火と水と木の詩』より)
先人の知恵と経験を借りながら今求められるデザインをする。注意深く周りを観察すると、なんでもないような、それこそ物置小屋のような建物にもとても美しいデザインを見つけることがあります。その建物をデザインした古の匠も、さらに先人の知恵を借りてその建物を建築したのだなと思うと、とても感慨深いものがあるのです。