設計の築山です。これからしばらく建築家吉村順三のことばを紹介したいとおもいます。今日はその4回目です
吉村は少年の時から住宅に興味をいだき、日本の自然と風土に培われてきた独特の伝統建築に魅力を覚え、人の生活と幸せ、ヒューマンなものを建築に具体化することを一貫して実施してきた。地域に貢献する、品のある美しい建築を求めて作りつづけて20世紀を生きた建築家である。
吉村は、生前、これからの建築家のあり方を問われたとき、「簡素でありながら美しいもの、自分達の住んでいる日本の、長年にわたる風土と文化によって培われてきたさまざまな建築から学び、日本の気持ちから出たものをつくるべきでしょう」と語った。
そうした建築家吉村順三のことばを、存命中に活字となった新聞、雑誌、書籍等から選び、吉村が語った「建築は詩である」ということばを借りて、語録集『建築は詩』を刊行する(本文中「はじめに」より)
すまい 生活と人の感情
よい住宅
たまり—–重心のある空間を
よいプロポーションでおさまっている家、単純明快におさまっているシンプルな家などはたいへん気持ちのよいものであるが、「よい住宅」というのは、形そのものよりむしろ、その家自体に「たまり」というか、重心のある居住空間のある家のことだと思う。
フィリップ・ジョンソンの自邸は1室空間のシンプルな形をした気持ちのいいものであるのだが、私はむしろその住居空間が使われ方によって、「たまり」を中心としていろいろと変化する魅力ある演出に感心したのである。「たまり」はそこで営まれるであろう家庭生活を豊かに楽しくするものである。それは昨今のレクレエーションにならないレジャーなどで心身をすりへらさずにすむような場を家庭生活に与えることになるだろう。(『新建築』1966年1月号より)
自宅に帰ることが億劫になるようでは元も子もない。心身ともに安らげる場所でなければいけませんね。